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中国高速鉄道に関する考察2011年5月 第1回
(1)突如現れた技術国「中国」
あまりにも突然の展開に、言葉を失った。
アメリカの高速鉄道プロジェクトの受注合戦に、中国の鉄道企業が名乗りを上げたからだ。
■「中国の鉄道高速化・高速鉄道」写真特集
中国の高速鉄道建設は、2004年に本格的に始動したばかり。この短い期間に中国はいったいどのようにして、日本やドイツ、フランスなど高速列車先進国に並ぶ技術力を身につけたのか。
その裏には、中国のある戦略がある。
(2)中国の高速鉄道計画が持つ二つの顔
なぜ中国はこれほどの短期間に高速鉄道技術を得ることができたのか。裏側にあるのが、中国国内の高速鉄道計画だ。
2004年、「中長期鉄道網計画」が中国国務院で認可された。これは高速鉄道を含めた鉄道網を中国全土に建設するという計画だ。
計画を進めるにあたり、技術力は不足しているが巨大な市場を持つ中国は、技術力がありチャンスを探し求めている海外メーカーと手を結ぶことにした。2004年から2005年にかけて、中国鉄道省はカナダのボンバルディア社、日本の川崎重工業、フランスのアルストム社、ドイツのシーメンス社と次々に提携、これらの企業が持つ高速鉄道技術を導入した。
中国鉄道企業側と海外メーカーとの契約には、技術供与も盛り込まれていた。海外メーカーは代価を得る代わりに、中国人エンジニアの育成やノウハウを提供するなどの形で技術を供与した。
つまり、中国側は海外メーカーに対して“中国市場でビジネスを行うチャンス”を提供するのと引き換えに、それら海外メーカーから高速鉄道技術を手に入れたわけだ。中国「中長期鉄道網計画」は国内の鉄道網を建設するのと同時に、海外の先端技術を獲得するための計画でもあったと言える。
(3)想定外だった中国高速鉄道の海外進出
このように、海外メーカーは中国側に対して技術を供与したが、海外メーカーにとって想定外だったのは、中国鉄道企業が短期間で海外進出し始めたことだ。海外メーカーから技術を手に入れた中国鉄道企業は、独自に「技術革新」を行い、その技術を「中国製」として海外に売り込み始めた。
それに対して海外メーカーが異議を唱えた。ウォール・ストリート・ジャーナルは次のように説明している。
「中国は、自国企業が売る鉄道が外国技術によって開発されたことは認めている。しかし、当局者は、中国南車(CSR)などの中国企業は独自の技術革新を加えており、完成した製品は中国製にあたる、と主張する。中国鉄道省は、『中国の鉄道業界は、外国技術を学び、体系的にまとめ、再革新することで、新世代の高速鉄道を製造した』と本紙の質問に回答した。一部の海外企業幹部は、輸出に『再革新』の技術が含まれた場合、それは中国の契約違反だと指摘する」(引用元:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版「中国の高速鉄道、海外企業から不満噴出」)
(4)高速鉄道だけではない。ロシアの戦闘機のケース
中国企業側が技術革新によって作り上げたものが実際に中国製にあたるのかどうかについては、今まさに双方が争議しているが、中国企業側がこうした行動を起こしたことによって、海外メーカーにとっては少なくとも二つの面で痛手となる可能性がある。
一つ目は、「再革新」された高速鉄道が中国で製造されることにより、海外メーカーが中国市場から追い出される可能性があること。二つ目は、ブラジルやサウジアラビアなど、海外の高速鉄道プロジェクトにおいて、中国企業が海外メーカーのライバルとして立ちはだかる可能性があるということ。
二つ目についてはすでに起こっている。たとえばアメリカ・カリフォルニア州での高速鉄道プロジェクトにおいて、中国国営企業である中国南車は米ゼネラル・エレクトリック(GE)と共同で入札することに合意している。今後も、日本を含めた海外メーカーは様々な場面で中国勢と競争しなければならなくなる可能性が高い。
このように、中国側に技術を供与した結果、中国企業と競争せざるを得なくなるケースは、高速鉄道が初めてというわけではない。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、ロシアの戦闘機、駆逐艦、潜水艦やミサイルに200億〜300億ドルを支払い続けてきた中国は、ロシアの技術を解析したあと、自国で高性能の戦闘機を製造し、発展途上国に売り込んでいるという。(参考文献:ウォール・ストリート・ジャーナル日本版「中国、ロシア製そっくり戦闘機を途上国に販売攻勢」)
(5)変化する国際競争環境
中国がこうした戦略を採ることによって、世界の競争環境は急速に変化している。今回は「高速鉄道」や「ロシアの戦闘機」について触れたが、実際には相当広い分野で同じことが起きていると考えられる。
そのため日本企業としては、中国企業のこのような行動を見越したうえで、中国との関係を慎重に築かなければならない。また、今後様々な分野において中国企業が突如ライバルとして現れる可能性があるため、動向に注意する必要がある。
(6)日本は中国との関係を見直すべきか
中国企業のこうした戦略に対して、中国の人々はどのように思っているのだろうか。
サーチナ総合研究所(上海サーチナ)が2011年5月に中国全土の3000人を対象にインターネット調査を実施、「中国が海外技術を取り入れ、それを基に技術革新を行い、海外市場に打って出る戦略についてどう思いますか」と聞いたところ、「海外進出はすべき。ただし、独自開発したものを売り込むべきであり、他国の技術を使ったものを売るべきではない」が53.1%となり、およそ半数となった。
次いで多かったのが「海外技術を取り入れるべきだが、盗用に当たる場合、国際的な信用を失わないよう、海外市場に売り込むべきではない」で、25.9%だった。
高速鉄道のようなケースがあるとはいえ、全ての中国企業が同様の行動を起こすと判断するのはもちろん乱暴すぎるだろう。日中間で強いパートナー関係を築き上げている企業も多いと思う。ただ、今後中国と関わりを持つ場合、中国企業側が何を思って日本側と関係を結んでいるのかを考え、変化する状況に合わせて関わり方を見つめなおすことは必要になるだろう。(編集担当:森川慎一郎・サーチナ総合研究所研究員)
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